インパクト、それは人間予想もしていなかったことが現実になるときほど大きいものだ。
だからこそ人はどん底から這い上がって栄光をつかむ人をよりリスペクトする傾向がある。
こんな話を聞いたことがある。陸上大国ジャマイカでは突然彗星のように現れ、北京五輪3冠、世界記録を次々と塗り替え、いまや世界短距離王者の名をほしいままにしているウサイン・ボルトよりもアサファ・パウエルの人気のほうが高いとか。
パウエルはボルトが現れる前は世界記録をたたき出したこともある実力者だが、五輪や世界選手権などの大舞台では極度の緊張からかフォームが乱れ、いまだ無冠。「無冠の最速男」というレッテルまではられていた。
ジャマイカの国民はパウエルがいつの日かどん底から這い上がって栄冠をつかむというドラマを待ち焦がれているのである。
”今年の日本人大リーガーのMVPはイチローではなく無論松井だと思う。”
昨夜、大リーグワールドシリーズ、ヤンキース3勝2敗の王手で迎えた第6戦。シーズン、ポストシーズン通じて最後までDH起用だった松井が4打数3安打6打点(うち1本塁打)の大暴れ。
この試合、チームの得点のほぼすべてを稼ぎ、見事チームをワールドチャンピオンに導いただけでなく、自身もシリーズ最優秀選手(MVP)に選出された。WSトータルでも13打数8安打3本塁打8打点と文句なしの成績だった。
チームから来年の契約は結ばないと言われ、けがの不安から今年は守備の機会はゼロ。他のライバルとDHの座を争う中で日に日に代打での起用が多くなった。しかし、シーズン後半は代打でも期待にこたえ、どん底から最終的にはWSのMVPまで獲得してしまった。なにかテスト入団で中日に拾ってもらい、背番号99という屈辱から最終的にはチームは日本一、自身も日本シリーズMVPを獲得した2年前の中村紀洋をほうふつとさせる。
そういう意味では今年の日本人大リーガーのMVPはイチローではなく無論松井だと思う。
今年、イチローは日米通算安打の日本記録と9年連続200本安打を達成した。これだけの偉業を成し遂げても、しかし、何かインパクト不足だ。
われわれは今年春のワールドベースボールクラシックで苦しみもがいたイチローを見た。そして最後の決勝タイムリーは日本中を感動の渦に巻き込んだ。
それはおそらく初めて我々が“ドロドロのユニフォーム”を着るイチローを見たからではないだろうか。
いつもテレビで見る涼しげな顔で安打を量産し、“まっさらなユニフォーム”を着るイチローよりも、苦しんで栄冠をつかんだWBCでのイチローのほうが人は共感し、感銘を受けるのだ。
だからこそ今シーズン“泥まみれのユニフォーム”を着続け、チャンピオンリングとMVPを獲得した松井秀喜に今年自分からはMVPをあげたい。
チームが変わるのか、オフに注目ですが、どこであれこれからも松井選手の健闘を祈っています。そしてパウエルもね。
(了)


by タカヒロ。
今年もよろしくお願いいたしま…